日本比較内分泌学会は、1961年に神奈川県大磯において開催された第3回国際比較内分泌学シンポジウムを契機として、わが国にも生物学的観点を主体とした基礎的な内分泌学の発展を図るため学会を設けるべきであるという内外の要請を受けて、101名の発起人のもと1975年に設立された。
当時東京大学理学部附属臨海実験所教授であった小林英司初代会長は、会員間の情報交換の場として発刊された「日本比較内分泌学会ニュース」の第1号の巻頭言で、「ある現象について、異なった動物群の動物を比較検討し、その現象に対して一般性のある説明原理を得ようとするような学問を比較内分泌学という場合が多い。この考えは間違いではない。ただ、留意すべきことは、この場合、ある事柄を種々の動物で単純に比較しているのではなく、動物の進化の説を基盤として比較しているのであって、その行為自体が一つの思想を内容として持っていることである。たとえば、鳥類と爬虫類とを比較することと、月とスッポンを比較することは、同じ比較といっても内容的には全く異なっているのである。比較内分泌学では進化の説を基盤としていると述べたが、このことは研究者が動物を比較できることの保証となっているのである。その理由は、現在の鳥類と爬虫類とは共通の祖先型から出発して変遷してきたもの、還元すれば同一の母集団から出発してきたものと考えられるからである。」と述べ、比較内分泌学の定義を試みている。
日本比較内分泌学会は大会とシンポジウムを毎年開催しており、2017年度には42回を数える。また、1987年の第1回アジア・オセアニア比較内分泌学会議(名古屋)、1997年の第13回国際比較内分泌学会議(横浜)をはじめとして多数の国際学会とシンポジウムを主催している。
学会としてのジャーナルを持たないが、1996年よりAcademic Press社から刊行されているGeneral and Comparative Endocrinologyを提携誌としている。また、日本比較内分泌学会編集による「ホルモンの生物科学」(全10巻、学会出版センター)、 「ホルモンの分子生物学」(全8巻、学会出版センター)、 「ホルモン実験ハンドブック」(全3巻、学会出版センター)、 「内分泌器官のアトラス」(講談社)、 「ホルモンハンドブック」(南江堂)、 「からだの中からストレスをみる」(学会出版センター)、 「生命をあやつるホルモン」(学会出版センター)、 「Handbook of Hormones - Comparative Endocrinology for Basic and Clinical Research -」(Elsevier)、 「ホルモンから見た生命現象と進化」(全7巻、裳華房)などを発刊している。学会の他の刊行物として、季刊の「日本比較内分泌学会ニュース」(2008年より 「比較内分泌学」)がある。
2017年2月14日現在の会員数は470名で、生物学・農学・医学・薬学など幅広い分野から会員が参加している。年会費は一般会員5,000円、学生会員3,000円、賛助会員50,000円である。
第23期会長 佐竹 炎(サントリー生命科学財団)
このたび、兵藤晋前会長の任期満了に伴う会長選挙で選出され、日本比較内分泌学会の会長を務めることとなりました佐竹炎です。今年、本学会は設立 50 周年という節目の年を迎えました。また、2025 年は仙台で第 19 回国際内分泌学会議 (19th International Conference for Comparative Endocrinology, ICCE19) が、2026 年には 50 回記念大会が開催される予定です。このような節目を迎え、新たな進展を目指していく伝統ある学会の運営を担うことに身の引き締まる思いです。2 年間という任期の間、皆さまとともに本学会のさらなる発展に尽力してまいります。何卒よろしくお願い申し上げます。
本学会は、様々な生物種や内分泌学的な現象を対象とする研究者が、教員から学生まで分け隔てなく議論を深め、交流を楽しむ場として、長年にわたり発展してきました。私自身、学生時代にある学会の大会に参加し、老若男女問わず、時には楽しそうに、時には真剣に研究や将来の展望を語り合う光景に心を打たれました。そのとき、「自分もこのような素晴らしい研究者たちの輪に入りたい」と強く感じたことを今でも鮮明に覚えています。このような経験から、私が目指す学会の姿は「楽しくて有意義な学会」であることです。
本学会は規模としては小規模ですが、だからこそ得られる親密さやフットワークの軽さがあります。この良さを生かしながら、会員間の情報共有や交流の広がりをさらに推進していきたいと考えています。
昨今、研究を取り巻く環境はますます厳しくなっています。資金や時間の制約がある中で、成果が順調に出ている方も、思うような結果が得られていない方もいらっしゃることでしょう。本学会の大会は、どのような状況でも、どなたでも参加することで有意義な学びや新たな刺激を得られる場でありたいと願っています。成果を共有し合い、互いに励まし合いながら、新たな挑戦に向けて力を得られるような大会の開催を目指してまいります。
また、これまでの役員や委員の皆さまのご尽力により、学会のホームページや学会誌の内容が大変充実し、情報発信の基盤も整えられてきました。同ホームページをさらに有意義な交流の場や情報収集の場としてさらに発展させるために、近年著しい進歩を遂げている AI ツールのノウハウや活用法についての情報交換の場を設けることを構想しています。さらに、書籍出版では、本学会の研究や会員の人となりをSNSなどのプラットフォームを通じて広く発信し、多くの方々に知っていただく取り組みも進めていきたいと考えています。
今年 50 周年という節目を迎えた本学会の歴史を振り返るとともに、これからの未来に向けた新たな挑戦を進めていきましょう。比較内分泌学は、様々な生物が示す現象とそのメカニズムや進化を明らかにしようとする、幅広く発展することが期待される学問領域です。他分野との連携や新しい視点を取り入れながら、この学問をさらに発展させていくため、会員の皆さまが活躍できる場を広げていきたいと考えています。
これからの 2 年間、共に学び、楽しみ、そして意義深い成果を共有できる学会を築き上げてまいりましょう。会員のみなさまからのご要望も歓迎いたします。皆さまのご協力を心よりお願い申し上げます。
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