このセミナーでは、男女共同参画学協会連絡会 第20期副委員長の須藤雄気先生(岡山大学学術研究院医師薬学域)と名古屋大学副総長(多様性・男女共同参画担当)の束村博子先生にご講演いただきました。質問用紙・フォームでいただいた参加者の質問について、須藤先生が回答してくださいました(回答は須藤先生の個人的な見解であり、学協会連絡会としての公式回答ではありません)。
このセミナーでは男女共同参画に関して長年ご尽力されてきた大坪久子先生と裏出令子先生に「外してみませんか! 無意識のバイアスの色眼鏡」というタイトルでご講演いただきました。セミナー時間中にご回答いただけなかった質問について、大坪先生、裏出先生から文章で答えていただきました。
また、参考資料2点も提供していただきました。Q&Aとともにぜひご覧ください。
その他、無意識のバイアスに関しては下記のウェブサイトもご参照ください。
わが日本比較内分泌学会が「男女共同参画学協会連絡会」に加盟していることをご存じの方はそれほど多くないのではないかと思い、ご紹介させて頂きます。この連絡会は、学協会間での連携協力を行いながら、科学・技術の分野において、女性と男性が共に個性と能力を発揮出来る環境づくりとネットワークづくりを行い、社会に貢献することを目的として設立されました。当初、応用物理学会、日本化学界、日本物理学会が中心に理工系学協会に呼びかけ、自然科学系の31学協会が加盟して2002年10月に発足しましたが、その後加盟学協会数も増え、2005年10月現在では、47学協会(うち正式加盟は27)が加盟しています。日本比較内分泌学会は発足に少し遅れて正式メンバーとしてこの連絡会に参加しており、菊山榮会長が2003年10月7日に開催された1周年記念シンポジウムにおいて新規加盟学協会会長挨拶をされました。
学協会連絡会では文部科学省生涯学習政策局から「科学技術系専門職の男女共同参画実態調査」に関する調査研究事業の委託を受け、参加学協会員約40万人に対してアンケート調査を実施しました。その際には、日本比較内分泌学会員の皆さんからもたくさんのご協力を得ました。このアンケート調査には約2万人の方から回答が寄せられ、その分析結果は、平成15年度文部科学省委託事業報告書「21世紀の多様化する科学技術者の理想像?男女共同参画推進のためにー」として2004年3月に発行され、貴重な資料として各方面に活用されています。このアンケート調査では、いくつかの興味深い結果が得られました。例えば、女性研究者は男性研究者に比べて、著しく子どもの数が少ないことや、仕事と過程の両立に必要なこととして「保育施設の増設」を望む声や「男女の役割分担の意識を変える」ことが重要であるということが明らかとなりました。これらの結果は、育児支援制度の充実とともに、意識改革も重要な課題であることを物語っています。この報告書は連絡会のHP(http://annex.jsap.or.jp/renrakukai/)でも公開されていますので、興味のある方は一度ご覧になってはいかがでしょうか?
学協会連絡会は、2004年10月に政府ならびに研究諸機関に対して「科学技術研究者に適した育児支援制度の整備に関する提言」を提出し、政府、大学ならびに研究機関に対して積極的に育児を支援する具体策を講じることを提言しました。育児支援の充実は、科学技術分野のみならず、日本における男女共同参画を推進する具体策として最も有効な対策のひとつです。科学技術分野での男女共同参画が進むことにより、女性研究者がその能力を発揮しやすい研究環境をつくるのみならず、男性研究者にとっても仕事と家庭にバランス良く関わっていくことができる研究・家庭環境をつくることにもつながると期待されます。
学協会連絡会は、発足して以来毎年、シンポジウムを主催してきました。昨年2004年10月7日には東京大学駒場キャンパスにおいて第2回シンポジウムが開催され、日本比較内分泌学会からは筆者が、アンケート(前述)分析分科会の取りまとめ役の一人として参加しました。また、日本比較内分泌学会からのポスター発表として、2004年に奈良で開催されたAOSCEのサテライトシンポジウム(Global Environment & Comparative Endocrinology: Contribution by Women Scientists in Asia and Oceania、3月26日奈良女子大にて開催)で発表された「アジア・オセアニアにおける女性研究者の研究環境に関する比較」の調査結果を報告しました。
また、2005年10月7日には、お茶の水女子大学において第3回シンポジウムが開催され、日本比較内分泌学会からは筆者が参加し、全体会の司会進行や各分野の方々との意見交換を行いました。
本連絡会に加盟する学協会では、最近、大会開催時に「託児所」を設置する例が増えています。われわれの日本比較内分泌学会も、今後は大会開催時に託児所の設置を積極的に考え、男女問わず、子育て中の研究者が安心して研究成果を発表できる機会をつくることが望まれます。これにより、さらに多く会員が大会に参加できることになり、ひいては研究や学問の発展に貢献できるのではないかと思います。